人物に学ぶ(大和ハウス工業 代表取締役会長 樋口 武男)−2

人物に学ぶ(大和ハウス工業 代表取締役会長 樋口 武男)−2

実体験から生まれる、世の中の先を狙う事業

常日頃、自分自身に語りかける「かきくけこ」という言葉がある。
「か」は感動、「き」は興味、「く」は工夫、「け」は健康管理、
「こ」は恋、つまりときめく気持ち、好奇心を持てということ。

これらを総動員して新しい事業に結び付けている。 
何度か病気をし、病院に行く度に、待合室でたくさんのお年寄りが
待っておられるのを目にした。

ほとんどの方が糖尿病だと知り、少しでも役に立ちたいと、
TOTOと一緒に健康管理ができる「インテリジェンストイレ」を開発。

自動的に尿を採取して検査し、パソコンと連動して自動的に記録が取れ、
異常値が出た時に病院に行けばいい、
従来のように自分の勘に頼る必要はなくなった。

これは「なぜ、なぜ」と繰り返し考えることがアイデアにつながった。 

1989年に「シルバー事業」を立ち上げ、介護・医療施設を全国に建設。

単に建物をつくるだけではなく、ヘルパー、院長ほか関係者の話を
直に聞いて、掲示板や洗面所の位置まで細かい点に配慮。

ロボットスーツHALTM」は、歩けない人がひとりで歩けるよう
補助をするロボット。本人の喜びや自信につながるだけでなく、
ご家族や介護する人など多くの人の助けになる。

 「農業の工業化」も目指すが、その先には無農薬でたくさん生産すること、
そして、例えば無農薬で育てたシイタケの菌を活用して薬品を……と、
先へ先へと未来の事業につなげる。

将来、世の中が必要とする事業は、プロダクトアウトではなくマーケットイン。

他企業の優れた技術を伸ばし、共に歩む

当社のベースは住宅だが、少子高齢化で住宅の絶対数が減少していくこともあり、
これからはグローバルに展開する事業を行いたい。

自社に技術がなければ、他の企業やベンチャーなどと一緒に取り組む、
その場合、相手先に乗り込んで偉そうに采配を振るうのではなく、
その企業の優れた技術を育て、成長を援助していきたい。

すると、相手は感謝の念を持ってくださり、やる気をだし、よい結果がでる。
相手を助けることにより、自分たちも助けられる。

そのためには、まず相手に信頼してもらう必要。メディアや書籍などを通じて
私たちを理解していただくと同時に、直接の対話などによる心を開いた
コミュニケーションを取ることが必要。

そうすると、様々なところから自然に情報が集まってくる。

総合的に物事をとらえ、心を込めて発信する。

大切なことは、誰にでも分かる表現を用い、あらゆる視点から伝える。

それには、まず現場に行くことが重要。
多くの人に会い、様々なものを見て、触って、五感を駆使して全身で感じる。

ひとつのものでも、その部分部分で感じ方が違うから全てを触る、
そして理解する。

そうすると全体が把握できると同時に、分かりやすく伝えることが
できるようになる。 

人間性も重要です。私は「偉い人」ではなく「立派な人」、
つまり相手に自然と尊敬の念を持ってもらえるような人になること。

「実るほどこうべを垂れる稲穂かな」と
 心を込めて、正直で、オープンなコミュニケーション、これが私の原点。

相手の気持ちを理解することに努め、自分の気持ちをきちんと伝えるために
本音で話す、これが相互理解につながる。

ハングリー精神を呼び戻すために様々な改革を行ったが、その過程でも
コミュニケーションの重要性を強く感じた。

最も大事なのは、姑息な戦略など取らず、人も会社も王道を歩むこと。