時機尚早の歴史に学ぶ

時機尚早の事例として、幕末の長州藩の傑物であった 
長井雅楽(うた)(1819〜1863)のことを紹介したい。

長井雅楽は藩主毛利慶親から命じられ、長州藩の中老に
就任し、「航海遠略策」を提出。

その中で「鎖国攘夷の信奉が日本の歴史からみて滑稽であり、
世界の現実とも適合しない」と説いた。

また、「日本はむしろ進んで開国し、商業の面で世界を
制圧する大商船隊をつくり、それによって得た富で武力を蓄積し、
国家を守るべきである」と主張した。

この論は、多くの攘夷論者の中で大反撃にあい、吉田松陰党や
薩摩の西郷達に狙われ、とうとう、藩主から切腹を申し渡された。

長井が死んで数年後、坂本竜馬がよく似た案で新国家の方向を
打ち出したことは歴史の皮肉ともいえる。

内外の政治情勢や環境が大きく変化する歴史の渦中では
ほんの少しの時機の違いにより、周囲のの評価が大きく
異なることの事例であった。