日本人の誇り(藤原正彦)に学ぶ

巻頭に、「個より公、金より徳、競争より和」を
重んじる日本国民の精神性は、文明史上、
世界に冠たる尊きものであった。

しかし、戦後日本は、その自信をなぜ失ったのか?

歴史を失った民が自国への誇りと自信を抱くことはない。

この誇りと自信こそが、現代日本が直面する諸問題を
解決する唯一の鍵となる。

そして今、未曽有の大震災への力強い復興への力を与え、
人々の心を支える。

日米安保条約の実効性への疑問

日本の領土がどこかの国に攻撃されたら直ちに
米軍が助けに馳せ参ずるとはなっていない。

最も大切な第5条は日本領内でどちらかが攻撃を受けた場合、
それぞれは「自国の憲法上の規定及び手続きに
従って共通の危険に対処するように行動する」
としか規定していない。

尖閣諸島を巡り日中間でいざこざが起きた時は、
アメリカも肝を冷やした。

中国が尖閣占領のような軍事行動に出た場合、
米軍が助けに来ないという事実を日本国民が知ってしまう
可能性があったから。日米同盟が揺らぐ危険を恐れた。

一方、長年にわたり「集団的自衛権の問題」を放置してきた
日本にも大きな問題がある。

例えば日米の駆逐艦が並走していて、第三国から日本艦が
攻撃を受ければ、アメリカ艦は自動的に助ける義務がある。

これに対し、アメリカ艦が攻撃されても、
日本艦は自分が攻撃されない限り、
憲法の制約により、相手を助けられない片務的な状態を放置してきた。

日米安保条約とは欺瞞の条約でしかなく、両国に責任がある。

日露戦争当時の日英同盟は「日英の一方が、挑発の結果でなく、
第三国から攻撃を受けた場合は、それがどこであろうと
他方は直ちに来て協同戦闘にあたる」と明言していた。

日本は自国を自分の力で守ろうとせず、守られていると
いう幻想の中で安眠している。

自国を自分で守ることもできず、他国にすがっている国は
半人前の国家と、各国からの侮りを受け、
外交上で卑屈になるしかなく、国民が祖国への誇りも持てないでいる。