日本蘇生への道標ー3

冷戦の最中では国際政治・軍事力強化が国内問題に優先権を与えられていた。

しかし、戦後、世界の国民は経済問題をより重視し始めたようである。

民族紛争が多発し、経済も保護主義化の傾向を強めるなど一連の動向も
こうした変化の帰結としてもたらされたものである。

現在、先進諸国の政権与党の敗北は新しいビジョンを示せなかったこと
に対するアンチテーゼである。

冷戦に負けたのは何もソ連だけでなく、米国・ドイツを始めとし、世界中が
冷戦経済の後遺症とバブルに崩壊に苦しんでいる。

作家の堺屋太一氏によれば、歴史的に見ると戦争の直後には「アプレゲール
シンドローム」という共通現象が存在するという。

・具体的には、
 ①物資不足②資金不足③難民の多発④国際的再編成⑤虚無文化
 の流行であるという。

当てはまると思うのは私一人ではないのではなかろうか
特に④の国際的再編成が価値観やレゾンデートルを巡り、
今正に沸き起こっているように思われる。

今や、世界同時不況とも言える国際環境にあり、各国は
不況色が強まる中で自国の利益を最優先する保護主義的な
動きを見せている。

ECの統合・米墨加自由貿易協定(NAFTA)・アジアが
経済ブロック圏の形成の危険を孕んでおり、自由貿易体制
そのものが危機に瀕している。

冷戦時代の二重構造に代わる新秩序は未だに構築されておらず、
脱冷戦の世界が混迷と多極化に向かってまっしぐらに走り出している。

クリントンの米国は国内経済力の疲弊や失業問題・双子の莫大な
赤字などの構造的ともいえる諸問題を多く抱え、政策はどうしても
内向きとならざるを得ない。

最大の貿易赤字国である日本に対し、米国の競争力強化
(タスク・フォース)の観点から一層圧力を強めてくるのは確実であろう。

今、ここで重要なのはクリントン政権になったから対日政策が変化する
といった短絡的なものではない。

先に触れたように、これまで日本の高度成長を支えてきたファクターが
存在基盤を失い、以下に触れるような変化を遂げている延長線上に現在が
あるという現状認識が必要なのである。

即ち、
①1985年日米円・ドル委員会での合意を受けた一連の金融自由化・
 金利自由化の実施が前述の(7)規制金利をベースとした日本の銀行の
 優位性を突き崩したこと。

②日銀による民間金融機関への「日銀貸し出し」が寄付行為との批判を
 受けていること

③株価の暴落による含み資産の激減

④「財テク」・「マネーゲーム」の終焉により企業の資本市場からの
  低利資金調達力の陰り

⑤「土地神話」の崩壊により、不動産担保万能型の信用創造カニズム
  も崩れ、不良債権の急増に伴う信用収縮(クレジットクランチの懸念)

⑥官主導で進めてきた各業界への行政指導もこの混乱の中で十分な機能を
 果たせなくなりつつあること

⑦株式持合いも「株価神話」が崩れた中では、投下資金コストに見合う
 相応のメリットや、投資収益率に見合う株式しか投資対象とならず、
 今後は縮小に向かうこととなろう。

企業経営者は自社の株主を自ら開拓していくことが求められ、
自社ファンをつくるための投資家向けリレーションシップである
「IR(インベスター・リレーションシップ)」活動が必要となってくる。

こうした諸変化に楔を打ち込むものとして「BIS規制」の存在
が大きく立ちはだかっている。