西郷 南洲翁遺訓に学ぶ

西郷 南洲翁遺訓から

第三ケ条 

政(まつりごと)の大体(だいたい)は、文(ぶん)を興(おこ)し、
武(ぶ)を振(ふる)ひ、農(のう)を励(はげ)ますの三(みっ)つに在(あ)り。

其(その)他百般(たひゃっぱん)の事務(じむ)は、皆(みな)此(こ)の
三(みっ)つの物(もの)を助(たすく)るの具(ぐ)也(なり)。

此(この)の三(みっ)つの物(もの)の中(なか)に於(おい)て、
時(とき)に従(したが)ひ勢(いきおい)に因(よ)り、
施行(しこう)先後(せんご)の順序(じゅんじょ)は有(あ)れど、
此(こ)の三(みっ)つの物(もの)を後(あと)にして、
他(た)を先(さき)にするは更(さら)に無(な)し。

(政治の根本は国民の教育を高め充実して、国の自衛の為に
軍備を整理強化し、食料の自給率、安定の為、農業を奨励する
という三つである。

その他の色々の事業は、皆この三つ政策を助ける為の手段である。

この三つの物の中で、時の成り行きによってどれを先にし、
どれを後にするかの順序はあろうが、この三つの政策を後回しにして、
他の政策を先にするというようなことがあっては決してならない。)

(学ぶべきこと)国家の政(まつりごと)の三つの基本は、
①に教育であり、②に国防であり、③食糧の安定自給であるという指摘は
現在の情勢にあっても、正鵠を得ている。明治から100年以上の時を経て
③のみ、農業を基本に漁業振興、産業振興を追加して考えるべきかも知れない。

第三十八ヶ条

世人(せじん)の唱(とな)ふる機会(きかい)とは、多(おお)くは
僥倖(ぎょうこう)の仕當(しあ)てたるを言(い)ふ。

真(しん)の機会(きかい)とは、理(り)を尽(つく)して行(おこな)ひ、
勢(せい)を審(つまびら)かにして動(うご)くと云(い)ふに在(あ)り。

平日(へいじつ)国天下(くにてんか)を憂(うれ)ふる誠心(せいしん)
厚(あつ)からずして、只時(ただとき)のはずみに乗(じょう)じて
成(な)し得(え)たる事業(じぎょう)は、決(けっ)して永続(えいぞく)
せぬものぞ。

(世の中の人の言うチャンスとは、
多くはたまたま得た偶然の幸せの事を指している。

しかし、本当のチャンスというのは道理を尽くして行い
、時の勢いをよく見きわめて動くという場合のことだ。

つね日頃、国や世の中のことを憂える真心がなくて、
ただ時のはずみにのって成功した事業は、
決して長続きしないものである。)
(学ぶべきこと)事業の王道を歩むためには、
本当のチャンスを捕まえるために
時流を見極めて行動することの大切さを説いている。